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亡くなった方が保険契約を行っていた場合、死亡保険金は遺産分割の対象となる?
相続における死亡保険金の扱いは少し複雑です。簡単にご説明したいと思います。
亡くなった方が保険契約を行っていた場合の保険金は、保険契約により受取人が指定されている場合は受取人の財産となり相続財産にはなりません(ただし、相続税の算定をする場合など、税金については取り扱いが異なります。)。
したがって、遺産分割協議の対象にならず、複数の相続人がいたとしても協議をすることなく受け取ることができます(特別受益となる可能性はあります。)。
また、相続放棄の申述を行ったとしても保険金を受け取ることは可能です。
ただし、受取人の指定がない場合、受取人を亡くなった方本人に指定していた場合は、遺産分割協議の対象となります。
まとめると以下のとおりとなります。
●遺産分割協議の対象とならない場合
・受取人が特定の人に指定されている
・受取人が相続人に指定されている
●遺産分割協議の対象となる場合
・受取人が「被保険者本人」と指定されている
・受取人が指定されていない
ご自身が亡くなった後に残された相続人が揉めることのないよう、一度保険契約についても見直されてみてはいかがでしょうか。
生前に特定の相続人に一切の財産を残さないこととすることは可能?
先日、テレビを見ていると某コメンテーターが、父親の遺産について放棄していると発言していました。その父親はまだご存命です。
「相続放棄」の申述は、相続発生前にはすることができませんので、もしかしたら、家族内で「すべての財産をもらわない・放棄する」と約束でもしているのでしょうか。それを「遺産について放棄している」と言ったのかもしれません。
ただし、あくまでも約束事になり、これには法的拘束力はありません。
では、生前に特定の相続人に一切の財産を残さないとするためにはどうすればいいのでしょうか。
まず、イメージされるのは遺言書を作成することだと思います。
遺言に特定の相続人に財産を相続させる旨や第三者へ遺贈する旨を書いておく。
(最近ではゆかりのある市へ多額の寄付をしたニュースもありましたね。)
これで万全!!
・・・では、ありません。
兄弟姉妹以外の相続人には『遺留分』があります。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人が最低限相続できる相続分のことで、この遺留分を「放棄」させる必要があります。
遺留分の放棄は、相続放棄の申述とは異なり、家裁の許可を得れば「相続が発生する前」でもすることができます。
ただし、1 放棄が本人の自由意思に基づくものであること
2 放棄の理由に合理性と必要性があること
3 放棄の代償を受けていること
この3つの要件を満たしていることが必要であり、家庭裁判所が判断します。
遺留分の放棄は、放棄する本人自らがする必要がありますので、ご家族でよく話し合いをすることが必要になります。
このように、『遺言+遺留分の放棄』によって、生前に特定の相続人に一切の財産を残さないこととすることは可能ですが、財産を残してもらえなくなる相続人の協力が不可欠になりますので、少しハードルが高いかもしれませんね。
『相続人』の範囲
相続手続きでは、亡くなった方の戸籍を出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・原戸籍謄本の一式が必要になります。
これは、誰が相続人であるかを特定するためです。
実際、ご相談に来られたお客様の中には、異父または異母兄弟がいたなどの事実が戸籍を確認して判明したこともありました。
では、『相続人』についてご説明します。
・配偶者は必ず相続人になります。
・第一順位の相続人・・・子(子が被相続人より先に死亡している場合は孫(代襲相続))
・第二順位の相続人・・・両親(両親が被相続人より先に死亡している場合は祖父母)
・第三順位の相続人・・・兄弟姉妹(兄弟姉妹が被相続人より先に死亡している場合は甥・姪(代襲相続)※甥・姪が死亡していても再代襲はありません)
※ 第二順位の相続人・第三順位の相続人は、先順位の相続人がいる場合は相続人になりません。
相続人にあたるのかわかりにくいケースの一例
・内縁の夫または妻・・・婚姻届を提出していなければ、実質夫婦として長期間生活をしていたとしても相続人になりません。相続財産を残したい場合には遺言書で遺贈等をする必要があります。
・養子縁組をしていない前夫・前妻の子・・・相続人になりません。相続財産を残したい場合には遺言書で遺贈等をする必要があります。
・相続放棄をした相続人の子や孫・・・相続人となりません。先に死亡した場合の代襲相続と違い、相続放棄を行った場合は、子や孫は相続人になりません。
・異父兄弟・異母兄弟・・・相続人となります。例としては、婚姻前の子や、再婚後に出生した子などです。
・養子又は養親・・・養子縁組により相続人になります。養子縁組を行っているか、離縁をしているかについて戸籍で確認する必要があります。
・包括受遺者・・・相続人にはなりませんが、相続人と同じ権利義務を有しますので、遺産分割協議に参加する必要があったり、拒否するには裁判所へ申述が必要となります。
せっかく遺産分割協議をしても相続人を欠く遺産分割は無効となったり、法定相続で相続する場合の割合に影響しますので、相続人の特定は、相続手続きにおいて非常に重要な作業となります。
相続人の特定が難しい場合は、専門家に相談し、戸籍をみてもらうことをおすすめします。
相続人の中に認知症の方がいる場合の遺産分割協議について
遺産分割協議については、先日ご説明させていただきました。
今回は、相続人の中に認知症の方がいる場合についてご説明したいと思います。
認知症の方は、原則、法律行為ができないため、遺産分割協議を行うことができません。
この場合は、裁判所に『成年後見人』の選任を申立てます。
成年後見人とは、意思能力がないために法律行為ができない方に代わって、その方の利益のために法律行為をする人です。
ちなみに、申立てから選任まで2~3か月を要し、親権者と未成年者が遺産分割協議を行う際に選任される特別代理人とは異なり、選任後はその方の能力が回復するか死亡するまで原則辞めることができません。
通常のケースより手続きが複雑になりますので、専門家へのご相談をお勧めします。
相続放棄ができる期間は?
先日のコラムで「相続放棄」についてご説明しました。
相続放棄においてポイントとなるのが、相続放棄ができる期間についてです。
前にも記載しましたが、原則として、相続が発生したことを知ったときから3か月以内にしなければなりません。
では、相続放棄ができる3か月を越えてしまった場合や、3か月では相続すべきか放棄すべきか決められない場合はどうすればいいのかについてご説明します。
3か月を越えてしまった場合・・・
原則として、放棄はできず、プラスの財産もマイナスの財産も全て相続することになります。
3か月以内にしないといけないなんて知らなかった!という方もいらっしゃるかもしれませんが、残念ながら、制度を知らなかったことは理由となりません。
ただし、例外として放棄の申述が可能な場合もあります。
3ヶ月経過したことに特別の事情がある場合は、3か月を経過していても相続放棄が認められる場合があります。
特別な事情とは、判例によると下記の2点を満たしていることが必要です。
・被相続人に相続財産が全く存在しないと信じていた
・被相続人と交流がなかったなどの事情により相続財産の有無の調査が困難であり、信じたことについて相当な理由がある
各事情が、特別な事情があると認められるかどうかは裁判所の判断になります。
3か月以内に相続すべきか決められない場合・・・
被相続人と疎遠だった、財産内容が複雑であるなどにより相続財産の調査に時間がかかり3か月以内に判断が出来ない場合には、家庭裁判所に申述期間を延長する手続きを申立てることができます。
伸長されるかどうか、伸長の期間は、各事情により裁判所が判断します。
いずれの場合も、家庭裁判所に相当の理由を述べる必要があり、裁判所の裁量により判断されますので、一度お近くの専門家にご相談されることをおすすめします。
知っていますか? 遺留分減殺請求
遺留分減殺請求とは、遺言や生前贈与によって特定の人に過大に財産を分配するなどがあり、特定の相続人が自分の相続分を侵害された場合に、一定の割合で請求することができる制度です。
遺留分減殺請求を行うことができるのは、兄弟姉妹以外の法定相続人で、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年以内にする必要があります。(前記を知っていたか否かにかかわらず、相続開始の時から10年を経過したときも時効により請求権は消滅します。)
遺留分減殺請求の方法は、特に法定されていないので任意の方法で相手方に伝えればよいのですが、相手が応じてくれない場合には調停や裁判へ発展することがあるので、内容証明郵便等で請求したことが後に分かるようにしておいた方がいいです。
兄弟姉妹以外の相続人の方は、相続が発生したらできるだけ早く相続財産と相続人、遺言の有無を確認して、ご自身の遺留分が侵害されていないかを確認することをおすすめします。
※ 遺留分についての改正点
(2019年7月1日より法律が変わりました!)
① 遺留分の算定の基礎になる財産に持ち戻される生前贈与について、持ち戻しの対象となる贈与は相続開始前10年間のものに限るという期間制限が設けられることとなりました。
② 従来は、減殺請求があった場合、不動産や自社株などが相続人で共有になってしまい、不動産の処分や事業承継の障害になることがありましたが、遺留分減殺請求権が金銭債権となり、金銭で精算することとなりました。
請求権には行使できる期限があるので、遺留分が侵害されたかもという方、遺留分についてもっと詳しく知りたいという方は、一度専門家に相談されることをおすすめします。
相続放棄とは・・・
「相続放棄」は、「亡くなった人の財産を一切相続しない方法」です。
相続放棄をすると、「初めから相続人でなかった」ことになるので、遺産分割協議にも参加する必要もありませんし、また遺産分割協議とは違い、マイナスの財産についても相続しないことができます。
相続放棄は、相続人全員で行う必要はなく、放棄を行いたい人が単独で家庭裁判所に申し立てをして行います。
ですので、マイナス財産が多い場合や、相続に関わりたくない場合に、相続放棄が有効な手続きとなります。
(相続放棄のほかに、亡くなった方の財産を限度としてマイナス財産を支払う「限定承認」があります。プラス財産とマイナス財産がどれだけあるかわからない場合に有効な手続きとなります。限定承認は、相続放棄と違い、相続人全員で行う必要があります。あまり利用されませんが…。)
※相続放棄の注意点※
・ 原則として、相続が発生したことを知ったときから3か月以内に行う必要があります。(相続発生から3か月ではありません。)
・ 亡くなった方の相続財産を処分すると「単純承認(プラスの財産もマイナスの財産も全て相続する)」したとみなされて、相続放棄ができなくなります。
・ 相続放棄を撤回することはできません。
相続が発生したら、亡くなった方の財産を処分せずに、お早めに財産調査をされることをお勧めいたします。
「すでに3ヶ月経過してしまっている」「3か月で財産の調査を行っても決定できない」「申立てのやり方が分からない」など、相続放棄について相談したい場合は、ぜひ一度司法書士へご連絡してみてください。
遺産分割協議ってなに?誰がどのようにするの?
亡くなられた方の財産(相続財産)について、遺言書があれば遺言書に従って分配することになりますが、遺言書が無く法律で定められた相続分(法定相続分)以外の割合で分配する場合、相続人同士で話し合いをしてどのように分配するかを決定することになります。
これを「遺産分割協議」といいます。
まず、遺産分割協議は「相続人全員」ですることが必要で、相続人のうち一人でも協議に参加していない場合、その遺産分割は無効となります。
(相続人の中に未成年者がいる場合や認知症の方がいる場合などの手続きにつきましては、別の機会にご説明いたします。)
具体的には次のような方法で分割協議することが可能です。
《 現 物 分 割 》
不動産は妻に、預金は長男に、株式は二男になど、文字通り現物を分ける方法です。その他、1筆の土地を分筆して、分筆後の各土地を各相続人が取得する場合もこれにあたります。
この分割方法が、最もオーソドックスと言えます。
《 換 価 分 割 》
相続財産を売却し、その売却代金を各相続人が取得するという分割方法です。
相続財産が、不動産のみの場合など容易に分割できない場合の選択肢となります。
《 代 償 分 割 》
相続財産を特定の相続人が取得し、その代わりに他の相続人に相当額を代償金として支払うという分割方法です。
相続財産を取得した相続人は代償金を別で準備する必要がありますが、法定相続分で分配したいが、相続財産が実際居住中の不動産のみであり、売却などは考えていない場合の選択肢となります。
《 共 有 分 割 》
相続財産である不動産を、各相続人均等な割合で共有するなどの分割方法です。
①~③の分割方法では話がまとまらない時などの選択肢となりますが、将来的なことを考えるとあまりお勧めできる分割方法ではありません。
ご自身の場合、どの分割方法が最善かを一度ご検討されてはいかがでしょうか。
遺産分割協議書の作成方法や相続人の特定など、ご不明な点がございましたら、当事務所にご相談下さい!
知っていますか?「法定相続情報証明制度」
相続手続きにおいては、法務局、金融機関、保険会社から、「誰が相続人であるか」を確認するため、「亡くなられた方が生まれてから死亡するまでの戸籍謄本等」の提出を求められます。
原則、一旦は原本を提出する必要があるため、保険契約や銀行口座や証券などをたくさんお持ちだった場合には、各所へ順番に提出する必要があり手続きに時間がかかることや、費用をかけて複数取得したりすることがありました。
そんなときは、「法定相続情報証明制度」がとても便利です!
法定相続情報証明制度とは、法務局に「申出書」と、「亡くなられた方が生まれてから死亡するまでの戸籍謄本等」と、「亡くなられた方の相続関係を一覧にした図」を提出すると、法務局がその一覧図に認証文を付した写し(法定相続情報一覧図)の交付を受けることができ、法定相続情報一覧図は亡くなられた方が生まれてから死亡するまでの戸籍謄本等の代わりに利用することができます。
申し出・交付について法務局の手数料は無料(5年間)で、何通でも取得できるので、同時に手続きを進めることができます。
不動産や金融機関等を複数お持ちの方などは、ぜひ一度検討してみてはいかがでしょうか。
(注)現時点で上記制度に対応していない金融機関等もございますので、実際に手続きをされる場合は、各金融機関等へ事前にご確認ください。
土地の相続登記の登録免許税免税とは・・・
相続による所有権の移転登記をするときは、不動産の評価額の0.4%の税率で登録免許税(登記をする際に法務局に納める税金)がかかりますが、平成30年4月1日から令和3年3月31日までの期間は、相続により土地を取得した人が、相続による所有権移転登記をする前に死亡した場合、その相続による所有権移転登記については、この登録免許税がかかりません。
→相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合の登録免許税の免税措置「租税特別措置法第84条の2の3第1項」
つまり、相続を発生したが登記をしないまま次の相続が発生してしまった場合、最初の相続登記について登録免許税がかからない、ということです。
※ ただし、この対象は土地のみで、建物の相続には適用されませんので、ご注意ください。
相続登記は、売却するなどがない限りつい後回しにしがちですが、放置すると何代も相続が発生し、相続人が増えてしまうことで話がまとまりにくいことや、手続きが煩雑化することが多々あります。
免税措置があるうちに手続きを検討してはいかがでしょうか?!
免税の適用が受けられるかお知りになりたい方は、ぜひ一度ご相談ください!!
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